第69回 ( 2023年 ) 解説 PM61~PM80

臨床検査技師国家試験第69回 ( 2023年 )
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61. 32歳の男性. アフリカ系アメリカ人. 貧血の精査で採血した末梢血のMay-Giemsa染色標本を示す.

  • 鎌状赤血球 , 破砕赤血球を認める
  • 患者がアフリカ系であることを考えると鎌状赤血球症であると考えられる
  • 鎌状赤血球症は遺伝性疾患であり , マラリア感染に対して耐性があるが赤血球は低酸素状態で変形し , 変形した赤血球は柔軟性が低下する
  • 鎌状赤血球にはヘモグロビンSが含まれる

62. 無核の赤血球は放射線の影響を受けにくい

  • 放射線の影響を受けやすいのは分裂増殖能を有する有核細胞である

63. 染色体異常とそれに伴う融合遺伝子との組み合わせ

  • t ( 8 ; 21 ) ( q22 ; q22 )−RUNX1-RUNX1T1
  • t ( 9 ; 11 ) ( p21.3 ; q23.3 )−KMT2A-MLLT3 ( MLL-AF9 )
  • t ( 9 ; 22 ) ( q34 ; q11.2 )−BCR-ABL1
  • t ( 15 ; 17 ) ( q22 ; q12 )−PML-RARA
  • inv ( 16 ) ( p13.1 ; q22 )−CBFB-MYH11

64. 67歳の男性. 汎血球減少症の精査のため骨髄検査をおこなった. 骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本および鉄染色標本を示す.

  • 骨髄異形成症候群が考えられる
  • 骨髄異形成症候群では , 環状鉄芽球 ( 画像C ) や偽Pelger-Huet核異常 ( 画像B:核がダンベル状の好中球 ) がみられることが多い
  • 環状鉄芽球は赤芽球の核の全周の1 / 3以上にわたり5個以上の鉄顆粒を認めるものをいい , 鉛中毒・ビタミンB6欠乏症・ビタミンB12欠乏症でも出現する

65. 79歳の女性. 貧血と腰椎の溶骨性病変を指摘されて受診した. 血清と尿の免疫固定法による蛋白電気泳動の結果を示す. 

  • 多発性骨髄腫が考えられる
  • 血清中にはIgG-κ型のM蛋白 , 尿中にはκ型のM蛋白を認める
  • 患者年齢 , 貧血と骨病変の症状も多発性骨髄腫と一致する

66. 末梢血のMay-Giemsa染色標本

  • 巨大血小板を認め , Bernard-Soulier症候群※が考えられる

※ 巨大血小板はMay-Hegglin異常症でも認められるが , 今回の問題の選択肢はBernard-Soulier症候群のみであった

67. MCVが正常である患者の赤血球の大きさを測定し , 健常人と比較した成績

  • 遺伝性球状赤血球症が考えられる
  • 遺伝性球状赤血球症は膜蛋白の異常により赤血球膜表面積が赤血球内容物に対して相対的に減少し , このため赤血球が円盤状ではなく球状の形態となるが , 球状を呈する赤血球は全体の一部であるため , 正球性の貧血でありMCVは基準値内となる
  • これらの特徴から , 赤血球直径の分布のヒストグラムでは正常とより低値の2峰性となる
  • このほかの遺伝性球状赤血球症の検査結果として赤血球浸透圧抵抗性減弱 , 平均赤血球ヘモグロビン濃度 ( MCHC ) 高値が挙げられる
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68. 薬剤感受性検査でスキップ現象が認められたため再検査をおこなった. 初回と再検査の微量液体希釈法の結果を示す.

  • 最小発育阻止濃度 ( MIC値 ) は8μg / mlである
  • 薬剤希釈系列中に不連続な発育を認めることをスキップという
  • 1管のスキップは無視するが , 2管以上のスキップが生じた場合は判定を保留して再検査を実施する

69. 初尿を用いて検索をおこなう細菌にNeisseria gonorrhoeaeChlamydia trachomatisなどがある

  • 膀胱炎や腎盂腎炎などを疑う場合は中間尿で検査するが , 淋病やクラミジア性尿道炎を疑う場合では尿道分泌物を多く含む初尿で検査する

70. ブドウ糖発酵性

  • Aeromonas hydrophilaブドウ糖発酵
  • Burkholderia cepacia−ブドウ糖非発酵
  • Pseudomonas aeruginosa−ブドウ糖非発酵
  • Stenotrophomonas maltophilia−ブドウ糖非発酵
  • Yersinia pestisブドウ糖発酵

71. Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi

  • 乳糖・白糖を分解しない
  • インドールテストが陰性である
  • リジン脱炭酸試験が陽性である
  • オキシダーゼテストが陰性である
  • ガス非産生である
    • Salmonella属菌は一般的にどの菌種も乳糖・白糖非分解 , インドールテスト陰性 , VPテスト陰性である
    • S .TyphiとS .Paratyphi Aはシモンズのクエン酸塩培地に発育しない
    • S .Typhi以外のSalmonella属菌はガスを産生する
    • S .Paratyphi A以外のSalmonella属菌はリジン脱炭酸反応陽性である

72. 肺炎が疑われた患者の喀痰のGram染色標本を示す. 分離菌はブドウ糖を発酵し , オキシダーゼ試験と運動性は陰性であった.

  • Klebsiella pneumoniaeが考えられる
  • 菌体を取り囲むように大きな莢膜がみられ , 運動性が陰性でブドウ糖を発酵する特徴からKlebsiella pneumoniaeであると考えられる
  • ブドウ糖を発酵する細菌で運動性が陰性なのはKlebsiella属・Shigella属・Yersinia属※である

※ Yersinia属のY.enterocoliticaは30℃以下のとき , Y.pseudotuberculosisは25℃のときは運動性が陽性となる

73. 真菌

  • Aspergillus fumigatusは大分生子を形成しない
  • Candida glabrataは仮性菌糸を形成しない
  • Cryptococcus neoformansは莢膜を形成する
  • Exophiala dermatitidisは黒色コロニーを形成する
  • Mucor属は無隔壁の真性菌糸である
    • Candida属で特徴があるのはC.albicansであり , 仮性菌糸形成 , 厚膜胞子産生 , 発芽管形成の特徴がある
    • 黒色真菌は細胞壁にメラニン色素を含有する真菌を指し , 黒褐色のコロニーを形成する
    • 病原性の黒色真菌にFonsecaea属・Exophiala属・Phialophora属・Cladophialophora属がある

74. 微生物検査と目的

  • 結核を疑う患者の喀痰抗酸菌培養検査
  • 感染性心内膜炎を疑う患者の血液培養検査
  • レジオネラ肺炎を疑う患者の尿中レジオネラ抗原検査
  • クリプトコッカス髄膜炎を疑う患者の髄液中グルクロノキシロマンナン抗原検査
  • 抗菌薬関連下痢症 ( 偽膜性大腸炎 ) を疑う患者の糞便中のClostridioides difficileトキシン抗原検査
    • レジオネラ肺炎と同様に肺炎球菌性肺炎の補助診断として尿中肺炎球菌抗原検査がある
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75. 抗菌薬−作用機序

  • アミカシン ( アミノグリコシド系 ) − 蛋白質合成阻害
  • ダプトマイシン ( リポペプチド系 ) − 細胞質膜合成阻害
  • バンコマイシン ( グリコペプチド系 ) − 細胞壁合成阻害
  • ミノサイクリン ( テトラサイクリン系 ) – 蛋白合成阻害
  • シプロフロキサシン ( ニューキノロン系 ) – DNA合成阻害

76. Mycobacterium

  • M.lepraeは培養できない
  • M.tuberculosisは硝酸塩還元試験陽性である
  • M.marinumの至適発育温度は28℃である
  • M.fortuitumは培養7日目には肉眼的に観察できる ( 迅速発育菌 )
  • M.tuberculosisM.bovisは市販の結核菌検出用PCR試薬で鑑別できない
  • M.fortuitumM.abscessusなどの迅速発育菌は1週間以内に発育する

77. 選択分離培地−目的菌

  • BBE寒天培地−Bacteroides fragilis
  • CCFA寒天培地−Clostridioides difficile
  • CIN寒天培地Yersinia enterocolitica
  • NAC寒天培地Pseudomonas aeruginosa
  • Thayer-Martin寒天培地−Neisseria gonorrhoeae / Neisseria meningitidis

78. ノロウイルスやロタウイルスなどのエンベロープを持たないウイルスやClostridium属などの芽胞を形成する細菌は消毒用エタノールに対して抵抗性を示す

  • エンベロープを持たないウイルスに有効な消毒薬は中水準では次亜塩素酸ナトリウム・ポビドンヨード・ホルマリンとすべての高水準消毒薬である
  • 芽胞形成菌には高水準の消毒薬しか効果がない

79. 抗原抗体反応

  • 抗体の性質に依存した最適温度があり , 反応は温度に影響される
  • 可逆的反応である
  • 非特異反応が起こることがある
  • 地帯現象により偽陰性となる
  • 酸性にすると抗体は解離しやすくなる

80. RPRカードテスト

  • 地帯現象が起こる
  • 生物学的偽陽性が起こる
  • 被検血清は不活化しなくてよい
  • 1分間に100回転の速さで8分間水平回転する
    • 梅毒トレポネーマに特異的な抗体を検出するのはTPHA法である
    • 非動化 ( 不活化 ) した被検血清を用いて抗原液と反応させて , 1分間に120回転の速さで5分間水平回転させるのはガラス板法である
    • ガラス板法もRPRカードテストと同様に地帯現象が起こる

■ 続きの解説は《 こちら

画像の出典:臨床検査技師国家試験 第69回 午後 別冊

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