この記事では新卒と既卒の合格率を比較しながら、実際の臨床検査技師国家試験の難易度をデータを基に解説していきます。
毎年、今年は難化する ( した ) という噂?のようなものが広まっていますが、実際のところどうなのでしょうか?
はじめに、臨床検査技師国家試験の合格率の推移から見ていきましょう。
新卒者と既卒者の合格率の合計の値です。
全体の合格率は、おおよそ70~80%で横ばいですね。
■ 臨床検査技師国家試験の難易度は上がっているのか?
結論からいうと、グラフを見ていただくと分かるとおり臨床検査技師国家試験は全くと言っていいほど難化などしていないです。
国家試験なのでいきなり難化したり、いきなり易化したら、なり手不足などにも繋がるので当たり前ですが、、、( 【 番外編 】として後述しますが、例外?の医療系国家資格があります )
ただ、上記グラフの2011年の67.8%から2012年の75.4%と、2020年の71.5%から2021年の80.2%の約8ポイントの上昇は本当に易化した?のか?何があったのかよくわかりません… ( 繰り返しますが、この8ポイントすらも誤差だと思えてしまうレベルの医療系国家資格があります )
”臨床検査技師国家試験は全くと言っていいほど難化などしていない”と言いましたが、国試を不安に感じる受験者に喧嘩を売るつもりはありません。
むしろ、この記事は ( 特に現役生の ) 試験への不安が強い方にこそ見ていただきたいと思いっています。国家試験への不安から精神的に追い詰められてしまう方がいることも知っているからこそ、この記事で示す根拠を見て少し落ち着いていただければと考えています。
実際のデータという事実が示しているから、国試が難化したらどうしようと闇雲に怖がったり過度に不安になる必要はないんだなという事を最終的に理解してもらえたら嬉しいです。
次の項目で説明しますが、新卒に限って言えば近年の合格率は80%以上で90%を超える年もあります。
■ 新卒と既卒の合格率を比較【 受験者との関わりから見えた人物像も比較 】
では、ここからは新卒と既卒の合格率を比較しながら話を進めていきます。
近年のデータしか抽出できなかったのですが、新卒と既卒の合格率ではどれくらいの差があるのでしょうか。
こちらが、直近5年間の新卒と既卒の合格率です。
2021年の既卒の合格率の上昇はちょっと異常ですね…
表は横にスクロールできます ▶
全体の合格率 | 新卒者の合格率 | 既卒者の合格率 | |
第63回 ( 2017年 ) | 78.7% | 89.9% | 28.5% |
第64回 ( 2018年 ) | 79.3% | 90.5% | 29.1% |
第65回 ( 2019年 ) | 75.2% | 86.5% | 19.4% |
第66回 ( 2020年 ) | 71.5% | 83.1% | 21.8% |
第67回 ( 2021年 ) | 80.2% | 91.6% | 41.7% |
2021年はこれまでとは違った異常な ( 既卒者の ) 合格率なので除外して傾向をみていくと、新卒は80%以上の合格率をキープしているのに対し、既卒では2021年以外の年ではすべて30%以下 ( 2021年を除いた直近4年間の平均は24.7% ) とかなりの差がありますね。
これは皆さん予想通りでしょう。
新卒と既卒それぞれの受験者数と合格者数は以下のようになっています。
表は横にスクロールできます ▶
新卒受験者数 | 新卒合格者数 | 既卒受験者数 | 既卒合格者数 | |
第63回 ( 2017年 ) | 3870人 | 3481人 | 869人 | 248人 |
第64回 ( 2018年 ) | 3948人 | 3572人 | 881人 | 256人 |
第65回 ( 2019年 ) | 4002人 | 3462人 | 815人 | 158人 |
第66回 ( 2020年 ) | 3940人 | 3273人 | 914人 | 199人 |
第67回 ( 2021年 ) | 3947人 | 3614人 | 1168人 | 487人 |
既卒の2021年は前年、前々年の倍以上の人数が合格していますね…
受験者の割合では、直近5年間の全体の平均受験者数が4871人、うち既卒の直近5年間の平均受験者数が929人なので平均19%の受験者が既卒ということが分かります。
受験者の19% ( 4年間の平均 ) が既卒って以外に多い!
ただし、2021年に既卒受験者の約42%が合格したので、2022年では既卒受験者の割合はガクッと減少するでしょう。
合格者全体からみた合格者の構成比は以下のようになります。
異常な上昇をみせた2021年以外は、既卒の合格率がどの年も30%以下 ( 直近4年間の平均は24.7% ) なので、合格者構成比でみると悲惨なことになっていますね。
この集団が全体の合格率を下げる一翼を担っている訳ですから ( 失礼 ) 、真の?臨床検査技師国家試験の”難易度”は新卒者の合格率から考えればよいとプラスミドは思います。
つまり、現役生に限定すると10人中8~9人が受かる試験ということなので普通に勉強して ( 主に私大で実施される ) 卒試も突破してきた現役生にとって難しい試験ではないはずです。
「 今年は難化するのでは?絶対そうだ! 」と毎年の噂に振り回されているのは主に現役生ですよね。現役生は当然、本試験を受けたことがないので不安になる気持ちは分かりますが、実際のデータはこんなものです。
既卒の合格率はなぜ低い?
そもそも、”既卒”という事はほぼ全員が新卒時に不合格となっている母集団な訳で、その集団の合格率が低いのは当然といえば当然の結果です。
現役時に勉強しなかった、あるいは勉強できない何かがあった人たちが数か月後にはにいきなり勉強できない原因を排除して猛勉強を開始するなんてことの方が珍しい話です。
ここ1年で既卒の再受験の方からご連絡をいただくことが増えたのですが、多くの方が●回目と仰っており、2回目で合格に繋げられるほうが少数派なのかな?という印象を受けます。
ただ、話を聞いていても不合格になる理由は個人差が大きいため、既卒は××だから合格率が低い!とは言えないのが現状です。
不合格になる受験者の傾向についてはこちらの記事で解説しています。
この1年で感じた現役生と既卒者の違い
ここからは少し余談なのですが、前述のとおり既卒 ( 再受験 ) の方から勉強の相談?というかアドバイスお願いします的なご連絡をいただくことがしばしばあります。
現役生の方からも同様のご連絡をいただくことがあるのですが、この二者は、うまく言えないのですがメールの文面が違います。
現役生 ⇒ ××だったのですが、どうしたらいいですか?不安です。
的な内容に対して
既卒者 ⇒ ×××で、不合格になりました。現在も○○な状況で~…不安です。
表現が難しいですが、既卒者の方は聞いてもいない ( むしろそちらからご連絡いただいている訳でして ) ことを言い訳の様につらつらと書いていただくことが多いんですよね。
「 私は××で●回不合格になったのですが、プラスミドさんの知り合いで●回落ちた方はいますか? 」とか…
そんな事を聞いてどうする…!
××で不合格になりましたの部分も「 え?それって理由になる?後付けでは? 」と思うこともしばしばあります。つまり、不合格に繋がったと思われる原因を客観的に分析できていないということです。
全員が全員そうであるという訳ではないですが、なんというか自分のことなのに”他人事”のような、フワフワした感じを受けます。自分自身を遠くから眺めているような?やり取りをしていても結局は何が聞きたいのか、何が言いたいのか分からないという事がしばしばあります。自分の現状に共感をしてもらって一時の安心感?を得たいだけのような印象を受けます。
このような既卒の方との繋がりや関わりからも、既卒の合格率が低い ( 多浪になりやすい ) のも少し頷けてしまいます。悲しい事ですが。
一方で現役生の方は、内容自体は同じ「 どうしたらいいですか? 」的な文面だったとしても、”自分事”で現状を整理して、これからに繋げるぞという意気込み ( すぐ実践します感 ) が感じられます。また、現役生の方はやり取りをしていても、素直な印象を受けます。既卒の方とやり取りをするときに感じるフワフワ感?というかモヤモヤ感?は感じません。
現役生は既卒の方と同じように自身の現状をお話していただいても、現状を受け入れてそこから奮起するバイタリティのようなものを感じます。
第66回受験者の話なのですが、年明けの模試が90点いかないくらいで、この方ちょっと危ないなぁと感じるような方 ( 現役生 ) がいたのですが、春に「 合格できました 」とご連絡をいただいた時には、現役生の伸び率の凄さを感じました。
ご本人が少ない残り時間から逆算して猛勉強したという事実ががそのまま結果として反映されただけのことなのですが、1月に80点台から2カ月せずに本試験120点以上というのはそれだけ”自分事”として本気で勉強に向き合ってきた ( 勉強した ) 証拠です。
これと同じく、既卒の方が●回不合格になるのも勉強してこなかった証拠としか言いようがないのです。
このような受験者 ( 現役・既卒含め ) の方との関わりから思うことは、本当に合格したい既卒の方は現状を”自分事”として捉えて実践 ( 暗記 ) あるのみだということです。
極論、試験なんかと言ったらアレですが、勉強をしたか、していないかの違いがそのまま極めて現実的な結果として点数化されて120点以上あれば合格 or 120点以下なら不合格と振り分けされているだけの話なんですよね。
■ 【 番外編 】診療放射線技師国家試験と比較してみた
他の医療系の国家試験を例に出すと、主にレントゲン撮影をおこなう診療放射線技師国家試験の合格率はこんな感じです。
ジェットコースターかな?
どうですか?このガタガタなグラフ…
年によっては1年違うだけで20ポイント近くの落差がありますよね… ( 何があったのでしょう…? )
このレベルで合格率が変わるなら、毎年難化騒ぎが起きたり「 今年は難化するかも…どうしよう… 」と過度に怯えるのも理解できます。
診療放射線技師国家試験と臨床検査技師国家試験の合格率を比較すると、臨床検査技師国家試験の合格率がいかに安定?しているかがお分かりいただけると思います。
ちなみに、診療放射線技師も臨床検査技師と同じく養成学校を卒業 ( 卒業見込みを含む ) した者のみ受験資格があるので、冷やかし受験が多いといったこともないです。問題数も200問、120点以上で合格と臨床検査技師国家試験と同じです。
むしろ、臨床検査技師国家試験は指定の科目を履修した薬学部・獣医学部の卒業生や医師・歯科医師にも受験資格があるため、微々たる影響ですが、診療放射線技師国家試験よりも合格率が揺らぐ要因を抱えているはずです。
それにしても、診療放射線技師国家試験は今年 ( 2021年 ) で第73回!!長い歴史があるようですね!
これまた余談ですが、プラスミドが通っていた大学 ( 私立 ) にも診療放射線技師を養成する学科があったのですが、国試前の足切りが強烈に酷かったと記憶しています。このグラフを作ってみて今さら理解できました…。( 足切りは悪しき風習で反対という意見に変わりありませんが )
■ まとめ
データが示すように、臨床検査技師国家試験は近年において難化などしておらず、毎年の合格率の上下に不安を感じる必要は全くありません。
「 なんか皆がそう言ってるから、今年は難化するんじゃね?」
実際のところ本当にそうなのか?そんなに毎年毎年、難化 or 易化するようなものなのか?
データを見て自分で考えてみて下さい。何事にも言えることですが、みんなが噂しているからとか誰々がそう言っているからと流されずに自分で根拠を考えて情報が溢れている時代だからこそ、それを取捨選択していくことが大事です。
現役も既卒もどれだけ勉強をやってきたか、やってこなかったかの違いが合格 or 不合格の結果として毎年発表されているだけです。
しっかり身になる方法で勉強した ( 勉強している ) という事実だけが数か月後の自分を守ってくれます。
■ 出典
臨床検査技師国家試験・診療放射線技師国家試験ともに合格率はすべて厚生労働省発表の数値です。
♦ 厚生労働省の外部リンク