第48回から第66回までに出題された尿沈渣の写真問題をまとめました。全部で21問!
尿沈渣でみられる結晶や円柱類は多数ありますが、出題されているものには結構偏りがありました 。
尿沈渣の写真問題の出題回数
尿沈渣の写真問題は出題回を見てもらうと分かる通りほぼ毎年出題されており、重要な問題であると言えます。
-追記-
最新の第66回の試験では午前 ( シスチン結晶 ) と午後 ( ビリルビン結晶 ) の2問が出題されました!
出題回数をまとめたグラフを以下に示します。
過去問19年分で問題数は21問です。
出題回数最多は3回のシュウ酸カルシウム結晶と赤血球円柱のようですね・・・
寄生虫卵の写真問題に関しても同じことが言えますが、写真に出ているものを知っているか、知らないかだけの違いがそのまま答えられるか、答えられないかの違いになりますので、出題されているものに関しては最低限必ず覚えましょう。
写真問題は形を覚えるだけで正答できるものがほとんどですので、ある意味サービス問題であると捉えることもできます。シュウ酸カルシウム結晶に至っては同じ画像を3回も使い回しているようですし、完全にサービス問題でしょう。
実際の問題とその解答
第48回から追ってみたのでなかなかの問題数です。
第48回 午前 問35
【 問題文 】尿沈渣成分のSudanⅢ染色標本を下に示す. 写真でみられるのはどれか.
【 解答 】脂肪円柱
第49回 午前 問36
【 問題文 】45歳の男性. 尿沈査Sternheimer染色像を別に示す. 正しいのはどれか.
【 解答 】硝子円柱
第50回 午前 問39
【 問題文 】尿沈渣の無染色 ,強拡大標本を下に示す. この結晶について正しいのはどれか.
【 解答 】ほうれん草の摂取後に認められる
【 解説 】シュウ酸カルシウム結晶
第51回 午前 問37
【 問題文 】35歳の男性 ,浮腫が認められる. 尿沈渣 ( 無染色 ,強拡大 ) 標本を別に示す. この患者の検査所見として正しいのはどれか.
【 解答 】尿蛋白陽性・血清総蛋白濃度低下・血清コレステロール値上昇
【 解説 】卵円形脂肪体
第52回 午前 問35
【 問題文 】強拡大の尿沈渣標本を下図に示す. 矢印の示す構造物で正しいのはどれか.
【 解答 】高度の腎障害で認められる・尿細管腔で形成される
【 解説 】ろう様円柱 ( Sternheimer染色 )
第53回 午前 問46
【 問題文 】尿沈渣標本 ( 強拡大 ,Berlin blue染色 ) を示す. 考えられるのはどれか.
【 解答 】異型輸血・発作性夜間ヘモグロビン尿症
【 解説 】ヘモジデリン顆粒
第54回 午前 問7
【 問題文 】5歳の男児. 浮腫を主訴に来院した. 2週間前に感冒様の症状があった. 高血圧が認められる. 尿沈渣 ( Sternheimer染色 ,強拡大 ) 標本を示す. この患者の検査所見で上昇するのはどれか.
【 解答 】ASO価
【 解説 】赤血球円柱
第54回 午後 問6
【 問題文 】尿沈渣の無染色 ,強拡大標本を示す. この結晶について正しいのはどれか.
【 解答 】10%塩酸で透明になる
【 解説 】シュウ酸カルシウム結晶
第55回 午後 問6・問7
問6【 問題文 】みられる結晶 ( 下図 ) はどれか.
問7【 問題文 】この混濁尿が透明となるのはどれか.
問6【 解答 】リン酸アンモニウムマグネシウム
問7【 解答 】3%酢酸を加える
第56回 午後 問6・問7
問6【 問題文 】尿沈査標本を示す. 矢印で示すのはどれか.
問7【 問題文 】この患者でみられる検査所見はどれか.
問6【 解答 】卵円形脂肪体
問7【 解答 】血清アルブミン2.1g/dl・血清総コレステロール285mg/dl
第57回 午後 問4
【 問題文 】尿沈査のSudanⅢ染色標本を示す. 考えられる疾患はどれか.
【 解答 】ネフローゼ症候群
【 解説 】脂肪円柱
第58回 午前 問6
【 問題文 】尿沈渣のSternheimer染色標本を示す. 認められるのはどれか.
【 解答 】赤血球円柱
第58回 午後 問6
【 問題文 】尿沈渣の無染色標本を示す. 考えられる疾患はどれか.
【 解答 】腎癌・尿管結石
【 解説 】非糸球体型赤血球 ( 均一赤血球 ) による血尿
第59回 午前 問7
【 問題文 】尿沈渣の無染色 ,強拡大標本を別に示す. この結晶を溶解するのはどれか.
【 解答 】希塩酸
【 解説 】シュウ酸カルシウム結晶
第59回 午後 問7
【 問題文 】尿沈渣の無染色標本を別に示す. 考えられる疾患はどれか.
【 解答 】血管炎症候群・慢性糸球体腎炎
【 解説 】糸球体型赤血球 ( 変形赤血球 ) による血尿
第61回 午前 問5
【 問題文 】尿沈渣の無染色標本を別に示す. 認められるのはどれか.
【 解答 】赤血球円柱
第62回 午後 問3
【 問題文 】尿沈渣のSternheimer染色標本を別に示す. 考えられるのはどれか.
【 解答 】硝子円柱
第63回 午前 問4
【 問題文 】尿沈渣にみられた結晶を別に示す. 考えられるのはどれか.
【 解答 】閉塞性黄疸
【 解説 】ビリルビン結晶
第64回 午前 問5
【 問題文 】尿沈渣の無染色 ,強拡大標本を別に示す. この構造物が生成される疾患はどれか.
【 解答 】慢性尿路感染症
【 解説 】リン酸アンモニウムマグネシウム結晶
第66回 午前 問3
【 問題文 】尿沈渣の無染色標本を別に示す. 認められる結晶はどれか.
【 解答 】シスチン結晶
【 解説 】先天性シスチン尿症や酸性尿で認められる
第66回 午後 問9
【 問題文 】尿沈渣の無染色標本を別に示す. この構造物が生成されるのはどれか.
【 解答 】胆管癌
【 解説 】ビリルビン結晶
覚えるべきこと
第48回から遡って実際の問題をみてきたわけですが、何か気づくことはありましたか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?!
そうです!!
尿沈渣の写真問題で問われていることは主に3つに分けることができます。
- 写真に写っている構造物の名前を答えさせる
- 写真に写っている構造物に関連する病態 ( から考えられる検査結果も含む ) を答えさせる
- 写真に写っている結晶が何で溶解されるかを答えさせる
この3つです。
まとめ
上記の覚えるべきことを踏まえて、これまでに出題された尿沈渣の構造物に関する具体的なまとめに入りましょう。
シュウ酸カルシウム結晶
【 考えられる病態 】
- 必ずしも病的意義があるわけではない ( ホウレンソウの過剰摂取 )
- 尿路結石
【 溶解 】
希塩酸の滴下により溶解し ,透明となる
赤血球円柱
【 考えられる病態 】
- ( 急性※・慢性 ) 糸球体腎炎・ネフローゼ症候群・IgA腎症など
※ 急性糸球体腎炎はA群β溶血性連鎖球菌 ( Streptococcus pyogenes ) による咽頭炎に続発するものが最も多い
【 病態から考えられる検査結果 】
ASO価上昇 ( A群β溶血性連鎖球菌を原因とする急性糸球体腎炎 ) ・血清クレアチニン値上昇・尿素窒素上昇・クレアチニンクリアランス低下など
脂肪円柱・卵円形脂肪体
【 考えられる病態 】
- ネフローゼ症候群・糖尿病性腎症などの続発性ネフローゼ症候群など
【 病態から考えられる検査結果 】
尿蛋白陽性・血清 ( 総蛋白 ) アルブミン値低下・脂質異常・血清クレアチニン値上昇・尿素窒素上昇・クレアチニンクリアランス低下など
・ 卵円形脂肪体は偏光顕微鏡下でマルタ十字がみられる
硝子円柱
【 考えられる病態 】
- 健常人でもみられることがある
- 激しい運動後・高血圧症
リン酸アンモニウムマグネシウム結晶
【 考えられる病態 】
- アルカリ性尿でみられる
- 尿路感染症 ( 尿素分解菌がアンモニアを作り出すため ,尿がアルカリ化する )
- 蓄積されると尿路結石の原因となる
【 溶解 】
3%酢酸の滴下により溶解し ,透明となる ( 気泡の発生はしない )
ビリルビン結晶
【 考えられる病態 】
- 閉塞性黄疸・急性肝炎・肝不全などの肝胆道系疾患
【 病態から考えられる検査結果 】
γ-GTP・ALPなどの肝胆道系酵素の上昇・直接ビリルビン上昇など
【 溶解 】
10%水酸化カリウムの滴下により溶解
ろう様円柱
【 考えられる病態 】
- ネフローゼ症候群・腎不全・末期の腎炎など
【 病態から考えられる検査結果 】
尿蛋白陽性・血清 ( 総蛋白 ) アルブミン値低下・脂質異常・血清クレアチニン値上昇・尿素窒素上昇・クレアチニンクリアランス低下など
ヘモジデリン顆粒
【 考えられる病態 】
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症・溶血性尿毒症症候群・異型輸血などの溶血性疾患
【 病態から考えられる検査結果 】
血清カリウム上昇・LD上昇・AST上昇・間接ビリルビン上昇など
非糸球体型赤血球 ( 均一赤血球 )
【 考えられる病態 】
- 腎癌・膀胱癌・尿管結石・尿道炎など
糸球体型赤血球 ( 変形赤血球 )
【 考えられる病態 】
- ネフローゼ症候群・糸球体腎炎・血管炎症候群・糖尿病性腎症・IgA腎症など
シスチン結晶
【 考えられる病態 】
- 先天性シスチン尿症 ( 常染色体劣性遺伝 ) ・酸性尿
- 蓄積されると尿路結石 ( シスチン結石 ) の原因となる
【 病態から考えられる検査結果 】
先天性シスチン尿症ではシアナイド・ニトロプルシド試験が陽性となる
【 溶解 】
塩酸・水酸化カリウム・アンモニア水の滴下により溶解
ひとこと
尿沈渣でみられる円柱はネフローゼ症候群がらみが多いようですね。
血尿でみられる赤血球の形態に関しては糸球体由来の出血では変形赤血球、非糸球体由来の出血では均一赤血球という事も写真に写っている赤血球の形をよく見ればわかる ( 考えられる疾患も違う ) のでしっかり覚えておきましょう。
この解説に関してお気づきの事がありましたらお問い合わせフォームからご連絡いただけるとありがたいです。
画像の出典
♦ 厚生労働省のサイトリンク
- 臨床検査技師国家試験 第52回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第53回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第54回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第54回 午後 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第55回 午後 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第56回 午後 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第57回 午後 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第58回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第58回 午後 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第59回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第59回 午後 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第61回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第62回 午後 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第63回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第64回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第66回 午前 別冊
- 臨床検査技師国家試験 第66回 午後 別冊