61. 血漿鉄消失時間の測定結果
- 再生不良性貧血が考えられる
- 再生不良性貧血では鉄利用が低下するため , 血漿鉄消失時間は遅延する
62. 透過光を用いた血小板凝集能測定の方法
- 空腹時に採血する
- クエン酸ナトリウム加血漿を使用する
- 多血小板血漿の血小板数を確認する
- 血小板が凝集すると光透過度が増加する
- 凝集惹起物質にアデノシン二リン酸 < ADP > を用いる
63. 表面抗原-細胞
- CD138-形質細胞
- CD3-T細胞
- CD13-好中球
- CD34-造血幹細胞
- CD61-血小板
- CD2はCD3と同様に汎T細胞抗原である
64. 血球とその形態の特徴
- 幼若細胞・白血病細胞-核小体
- 好中球-drumstick < 太鼓のばち > ( 女性の好中球でみられる )
- 好酸球-ペルオキシダーゼ反応陽性
- 形質細胞-核周明庭
- 骨髄芽球-核と細胞質の面積比 < N / C比 > が高い
65. 自己免疫性溶血性貧血では網赤血球数と間接ビリルビンが高値を示す
- 溶血により間接ビリルビンが上昇し , 貧血を代償するために網赤血球数が増加する
66. 広範な皮下出血とAPTT延長が認められたため , APTTの混合試験を実施した.
結果を表に示す.
- 後天性血友病Aが考えられる
- 後天性血友病Aは、血液凝固第Ⅷ因子に対するインヒビターが存在し、血液凝固が阻害され広範な出血が生じる
- 被検血漿に正常血漿を各種比率で混合し , 37 ℃で 2 時間後に APTT を測定すると, APTT の延長が凝固因子欠乏によるものかインヒビターの存在によるものかを鑑別することができる ( クロスミキシング試験 )
- 凝固因子欠乏では , 正常血漿の添加により凝固因子が補充され , 凝固時間の延長が改善されるためAPTT 延長は容易に補正され , 下に凸のパターンを示す
- 後天性血友病Aのようなインヒビターの存在下ではAPTT 延長が補正されにくく , 上に凸あるいは直線的に低下するパターンを示す
- 抗第Ⅷ因子抗体は時間と温度依存性にその活性を阻害するため , 正常血漿との混和直後では抗体が十分に反応せず , 明らかな上に凸のパターンは示さないが , 37℃のインキュベーションによって2時間後には、より分かりやすく上に凸のパターンを示す
- 広範な皮下出血の所見とクロスミキシング試験で上に凸のパターンであることを合わせると後天性血友病Aが該当する
67. 末梢血のWright-Giemsa染色標本とエステラーゼ二重染色標本
- 急性単球性白血病が考えられる
- Wright-Giemsa染色にて幼若な単球系細胞が著増しており , エステラーゼ二重染色では青色 ( 特異的エステラーゼ:好中球系 ) , 茶褐色 ( 非特異的エステラーゼ:単球系 ) のうち茶褐色のみが陽性であり単球系細胞であることが分かる
68. 原核生物の特徴
- 核膜を持たない
- 有糸分裂はできない ( 二分裂で増殖する )
- 環状の染色体を有する
- ミトコンドリア等の細胞小器官を持たない ( リボソームは原核生物も有する )
- 細胞壁はペプチドグリカンからなる ( グラム陽性菌で含量が高い )
- 核膜やミトコンドリアを有し , 有糸分裂をするのは真核生物である
- セルロースからなる細胞壁を有するのは植物である
69. 選択物質として胆汁酸塩を含む培地にSS寒天培地 ( Salmonella属菌・Shigella属菌 ) やTCBS寒天培地 ( Vibrio属菌 ) がある
- 細胞外膜のないグラム陽性菌は , 胆汁酸塩の界面活性作用により溶菌して発育が阻害され , 目的とするグラム陰性桿菌を選択分離できる
- このほか , 胆汁酸塩を含む培地にDHL寒天培地 , MacConkey寒天培地がある
70. 抗菌薬-作用機序
- コリスチン ( ポリペプチド系 ) -細菌外膜に障害を引き起こし殺菌する
- ゲンタマイシン ( アミノグリコシド系 ) -蛋白質合成阻害
- バンコマイシン ( グリコペプチド系 ) -細胞壁合成阻害
- レボフロキサシン ( ニューキノロン系 ) -核酸合成阻害
- クロラムフェニコール ( クロラムフェニコール系 ) -蛋白質合成阻害
71. 芽胞を有する細菌にClostridioides difficile ※ ( 嫌気性菌 ) ・Clostridium属 ( 嫌気性菌 ) ・Bacillus属 ( 好気性菌 ) がある
- いずれもグラム陽性桿菌である
※ 旧名Clostridium difficileは2016年の名称変更によりClostridioides difficileとなり , 新しいClostridioides属となった ( 臨床検査技師国家試験でも2021年施行の第67回からこの菌名で出題されている )
72. 血中濃度モニタリングが必要な抗菌薬にグリコペプチド系薬 ( バンコマイシンなど ) とアミノグリコシド系薬 ( ゲンタマイシンなど ) がある
- このほか , 抗真菌薬のボリコナゾールもTDMの対象である
- 治療薬物モニタリング ( TDM ) は薬理作用が血中濃度と相関する薬剤や過剰投与により重篤な有害作用を引き起こす薬剤で実施される
73. 消毒用エタノールに抵抗性を示すウイルスにエンベロープを持たないノロウイルスや , 細菌では芽胞を形成するClostridioides属 ( 嫌気性菌 ) のClostridioides difficileなどがある
- 芽胞を形成する細菌にはClostridioides属 ( 嫌気性菌 ) ・Clostridium属 ( 嫌気性菌 ) ・Bacillus属 ( 好気性菌 ) がある
- ノンエンベロープウイルスには次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が有効である
- 芽胞形成菌にはグルタラールやフタラールなどの高水準消毒薬が有効である
74. C型肝炎ウイルスのワクチンは開発されていない
- C型肝炎ウイルスの他にE型肝炎ウイルスやヒト免疫不全ウイルスのワクチンも開発されていない
- 風疹ウイルス , 麻疹ウイルス , 水痘・帯状疱疹ウイルス , インフルエンザウイルスのワクチンは存在する
75. 目的菌-染色法
- Bacillus属-Wirtz法 ( 芽胞染色 )
- Cryptococcus属-墨汁染色 ( 莢膜染色 )
- Klebsiella属-Hiss法 ( 莢膜染色 )
- Nocardia属-Kinyoun法 ( 弱抗酸菌染色 )
- Trichophyton属-ラクトフェノールコットンブルー染色 ( 糸状菌の形態観察 )
- Leifson法は鞭毛 , Neisser法はCorynebacterium diphtheriaeの異染小体の染色に用いられる
76. 多剤耐性結核菌の判定に使用される抗菌薬にイソニアジドとリファンピシンがある
- イソニアジドとリファンピシンの両薬剤に耐性を獲得している結核菌を多剤耐性結核菌 ( MDR-TB ) という
77. 腸内細菌科の細菌をTSI培地 ( 左 ) とSIM培地 ( 右 ) へ接種し , 35℃で好気培養した結果を示す. SIM培地にはインドール試薬を滴下済みである.
- 結果の解釈は以下のようになる
- TSI培地斜面部が黄色であることから乳糖・白糖分解+
- TSI培地高層部が黄色であることからブドウ糖分解+ , 培地が試験管から浮き上がっていることからガス産生+ , 培地に黒色物質を認めないことから硫化水素非産生
- SIM培地へのインドール滴下で赤色になっていることからインドール+ , 培地全体に濁りがあることから運動性+ , 培地に黒色物質を認めないことから硫化水素非産生
- 上記からEscherichia coliであると同定できる
IND | H2S | |
Escherichia coli | + | - |
Citrobacter freundii | - | + |
Klebsiella pneumoniae | - | - |
Proteus vulgaris | + | + |
Shigella sonnei | - | - |
78. プラスミド
- 環状のDNAである
- 接合によって伝達する
- 耐性因子の1つである ( Rプラスミド )
- 染色体から独立した遺伝体である
- Fプラスミドは性の決定に関与する
- 細菌に感染するのはバクテリオファージである
79. ABO血液型抗原
- O型の亜型 ( Bombay型・ParaBombay型 ) はH抗原がない
- ほとんどの臓器 , 体液に発現している
- 亜型は先天的な抗原変異である
- 特異性を決定するのは糖鎖である
- 新生児の発現量は成人より少ない
- 後天性の抗原変異には腸内細菌感染による後天性Bや白血病でのA ( B ) 抗原減弱がある
80. ABO血液型検査をおこなったところ , オモテ検査B型 , ウラ検査O型で判定保留となった.
- 不規則抗体の存在が最も考えられる
- B亜型はB抗原の反応が弱いためオモテ検査が陰性や部分凝集となる
- cisAB型はAおよびB遺伝子を有し , オモテ検査で凝集の弱いAB型と判定される
- 後天性Bは腸内細菌感染によりA抗原が変化するためオモテ検査でAB型様の反応を示す
- 白血病ではA抗原およびB抗原が減弱してオモテ検査で ( A・B・ABそれぞれ元の血液型の ) 部分凝集となる
画像の出典:臨床検査技師国家試験 第67回 午前 別冊
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